活版所

 27,2012 03:32
 
    先日 とある古書店 店主に伺った話

    現在の日本の活版印刷所 絶滅の危機。

    名刺、はがき印刷だけでなく
    書籍の印刷が出来る活版印刷所が 
    現在の日本に、どのくらい残っているのだろう。
    
    ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット・・・
    膨大な種類の活字を管理し、運営していくことは
    大変難しいことらしい。 

    名古屋にある 活字の会社がつぶれたら
    日本の活版印刷の歴史は幕を下ろしてしまう・・・云々。

     

    それにしても、
    活版印刷で丁寧に生み出された印刷物は
    文字のひとつひとつが生きもののように温かく美しい。
    紙面から指先に伝わってくる感触。 繊細な凹凸の存在感。
    インクの匂い。
    
    活版印刷の技術や培ってきた歴史を
    残していくことは出来ないものか・・・。
    
    
    
 
     広大な銀河系宇宙を舞台に描く未完の傑作

    『 銀河鉄道の夜 』 宮沢賢治・作 の中に

     大好きなくだりがある。


     二、活版所

     ・・・・・

      家へは帰らず、ジョバンニが町を三つ曲がって

     ある大きな活版所にはいって、すぐ入口の計算台にいた
    
     だぶだぶの白いシャツを着た人におじぎをして

     ジョバンニは靴をぬいで上がりますと、

     突き当りの大きな扉をあけました。

     中にはまだ昼なのに電燈がついてたくさんの輪転器が

     ばたりばたりとまわり、きれで頭をしばったりランプシェードを

     かけたりした人たちが、何かを歌うように読んだり数えたりしながら

     たくさん働いておりました。

      ジョバンニはすぐ入口から三番目の高いテーブルにすわった

     人のところへ行っておじぎをしました。

     その人はしばらく棚をさがしてから

     「 これだけ拾って行けるかね。 」
      
     といいながら、一枚の紙切れを渡しました。

     ジョバンニはその人のテーブルの足もとから

     一つの小さな平たい箱をとりだして

     向こうの電燈のたくさんついた、

     たてかけてある壁のすみのところへしゃがみこむと、

     小さなピンセットでまるで粟粒くらいの活字を

     つぎからつぎとひろいはじめました。

     青い胸あてをした人がジョバンニのうしろを通りながら、

     「 よう、虫めがね君、お早う。 」

     といいますと、近くの四、五人の人たちが

     声もたてずこっちも向かずに冷たくわらいました。

      ジョバンニはなんべんも目を拭いながら

     活字をだんだんひろいました。

     六時がうってしばらくたったころ、ジョバンニは

     ひろった活字をいっぱいに入れた平たい箱を

     もういちど手にもった紙切れと引き合わせてから、

     さっきのテーブルの人へ持ってきました。

     その人は黙ってそれを受け取ってかすかにうなずきました。

      ジョバンニはおじぎすると扉をあけて

     さっきの計算台のところにきました。

     するとさっきの白い服を着た人がやっぱりだまって

     小さな銀貨を一つジョバンニに渡しました。

     ジョバンニはにわかに顔いろがよくなって

     威勢よくおじぎすると、台の下に置いたかばんをもって

     おもてへ飛びだしました。

     それから元気よく口笛を吹きながらパン屋へ寄って

     パンの塊を一つと角砂糖を一袋買いますと

     一もくさんに走りだしました。



     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


     
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